グラーツ民俗学博物館
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笠原恵実子 "Offering"展
グラーツ民俗学博物館(Volkskundemuseum Graz)笠原恵実子の個展"Offering"オファリング 主催:クンストハウス・グラーツ)が「日本の知覚」展と平行して開催されています。
エディション・ワークスで制作した大小合わせて17点のデジタルプリントのうち16点が立体作品と共に展示されています。

「Offering」とは賽銭、寄付、寄進、喜捨のことです。イタリアの有名な教会で笠原がふと目にした美しいオブジェ、それに近づいてみるとそれが Offering Box つまり賽銭箱であったことに驚いたことがこのプロジェクトの始まりでした。
教会に入るごとにその Offering Box を観察し始め、ついには、世界中の教会を巡り、賽銭箱の写真を撮り続けることとなりました。
他者のために私財を投げ出すという行為が隣人への愛によることはいうまでもないことですが、それが個人レベルではなく、教会という空間で行われるということは、その行為の対価として、死後の平安や天国への切符、あるいはこれから先の人生の幸福に何らかの保証を求める行為でもあることも、人間の普遍的な心情として当然のことでしょう。
その個人的な行為を受け止める小さな装置として、 Offering Box は史上最大の宗教と共に、二千年の歴史を持って世界中に広がっています。その姿は彫刻を施した立派な石や金属の箱から、ジュークボックスのようなもの、あるいは箱ではなく壁に開けられた小さな穴や、袋やかごなど、カトリック、プロテスタント、東方教会の区別に始まり、ヨーロッパ、南北アメリカ、アジア、オセアニア、アフリカと、その気候風土、文化、風習、習慣によって、その素材やデザインは様々です。そしてそれは時に性的な連想をさせる形であったりもします。
「Offering」をキーワードに笠原恵実子が世界中の教会を回り、写真に納めて歩く行為がこのプロジェクトです。


「Offering」のプデジタルプリント作品についてはこちらをご覧ください。

「Offering」の典型を表す6種類の立体作品は、様々な素材を用いて制作されました。金属、木、籐かご、皮革などで出来た5作品はこの展覧会に向けて日本で制作されましたが、刺繍を施した白い布に包まれた箱(上面にお金を入れるスリットがあいています。)は現地グラーツで制作され、そのクロスステッチの刺繍はこの地方独特のものです。
また同時に、宗教的なオブジェを多く持つ、この民俗学博物館所蔵の「Offering」のための道具3点(写真:右側3段目、ガラスケースの中はそのうちの2点)も展示されています。
   
   
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笠原恵実子
"Offering"

デジタルプリント17作品
笠原恵実子
"La Charme #3 2004 (Graz Version)"

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