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この作品”MANUS-CURE”は1050色のマニキュアの実際の色とその色につけられた名前が使われている。色の名前を辞書のようにアルファベット順にならべ、色見本帳のようにそれぞれの色サンプルと共に整然と配置されている。作品は全部で30ページからなり、聖母マリアの手を用いたドローイング1ページが添えられ、磨きあげられた金属製の箱に収められている。この作品を開けようとする人は、丁度お化粧をする時のように自分の顔と、まず、対面する事になる。 マニキュアという言葉はMANUSとCUREという二つのラテン語を起源とする言葉から出来ている。MANUSは手という意味であると同時に、かつてローマ法においては夫が妻に対して持つ権利をも意味した。手は人間がものを作り出す時に必ず使われる体の個所である事から、力や権力を象徴となったのである。それに対してCUREは治療する、癒すという意味を持っている。この二つの語があわさった”MANUCURE”は女性の化粧品の一つ、手の爪に塗る塗料をさす。 現在発売されている無数の化粧品の中でも、マニュキアは一番華やかで豊富な色数をもち、それぞれの色に様々な名前がつけられている。食べ物、風景、感情、セックスなどを表現するそのバラエティの広がりは想像を越えている。この沢山の色とその色につけられる名前を注意深く見ていくと、そこには人間が作りだすイメージの多様性、様々な欲望や衝動が映し出されていることに気が付く。 本来、化粧とは何者かになろうとする行為であり、人類学的意味での儀式的要素が当然ある。しかしながら、世界的な物質中心主義の現代では、化粧という行為の中には、自分をある商品価値に高めようとする資本主義的欲望も強く存在する。 このおびただしい数のマニキュアが作り出す色彩の変化の間に、ゆるやかに浮かび上がってくるものは、CURE-治癒-を待つ私たち自身の姿かもしれない。 |
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マルチプル作品 素 材:ネイル・カラー / 1050色 ポリエステル・フィルム 用 紙:ミュージアム・ボード紙 / 470 X 370 mm ケース:ステンレス・スティール エディション:18, A.P. : 3, P.P. : 2, B.A.T. : 1 価格:お問い合わせください 1999年「身体の夢」(京都国立近代美術館、東京都現代美術館)出展 京都国立近代美術館収蔵 |
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