都市拾遺物語
Tales - Metropolis Collection
2009


佐原和人

 


 

佐原和人による初めての木版画集。
ネットでのアート販売会社ギャラリータグボートのご協力で制作し、作家とエディション・ワークスの共同出版という形で実現しました。
作品は3点の水性木版画からなり、都市生活にちりばめられた情景が映し出されています。

伝統的な木版画の技法と共に、今回考案した方法により、少ない版数ながら幅広いトーンと水彩画的な雰囲気を出しています。そして、それぞれの作品にはパールのパウダーが漂うような雰囲気で用いられ(これも今回が初めての技法です)、華やかな空間を作り出しています。

エディション30の中で、最初の7部は3作品がポートフォリオに入ったセットです。
様々な色に染められた手漉きのコットン紙のケースに収まっていて、とても柔らかな風合いです。そのタイトルページには作家自身によって一枚一枚手彩色がされています。
一枚ずつ色も違い、ケースとの色と合わせて組み上がっています。また、ケース・扉・奥付の文字等は全て手刷りの凸版で、小さなセットながら贅沢な仕上がりとなっています。
     


 
       
 
 
 
 
都市拾遺物語 Tales - Metropolis Collection 

木版画3作品

技 法    :水性木版
用 紙    :生漉奉書

エディション :30(ポートフォリオ:1/30〜7/30 シート:8/30〜30/30) 
A.P :5 P.P :1 H.C :1 B.A.T :1

価格     :3点組ポートフォリオ   ¥96.000-
        シート        各¥33.600-
        額装         各¥46.600-

 
※上記の価格は改定前のものです。2014年4月以降の新価格をPRICE LISTにて必ずご確認下さい。
 
消したいけどついてくる Want to erase, but it is still here.


シートサイズ :360×480mm
イメージサイズ:257×380mm

     
  こっそり旅行 Secret Journey


シートサイズ :480×360mm
イメージサイズ:380×257mm

 
  しあわせな通勤 Peaceful Commute


シートサイズ :360×480mm
イメージサイズ:257×380mm

     
 

「都市拾遺物語」
"Tales - Metropolis Collection"

僕たちは全てを知っているわけではない。

例えば今日、ここまで来た道の、全ての名前を言えるだろうか。
見た木や車、建物、それに出会った人々の名前。少なくとも僕にはわからない。

都市の中で注目を集めるものはごくわずか。建築であればランドマークであり、人であれば一部の有名人だけ。大きな道に名前はあるけれど、小さな道には名前すらない。まれに誰かに名付けられた草木もあるけれど、多くの草木は一本一本に名を持たない。花の名前はあるけれど、人が一人一人持つように、花の一輪一輪に名は持たない。人ですら、ニュースやドラマに登場する人たち以外は群衆であり、都市生活者のひとりでしかない。

都市を形作るのは、名もなき人であり、物であり、事柄が大多数。そんな名もなき人や草花、動物や建物に、一筋の光を当ててみたらどうだろう。見逃してしまいそうな一瞬にも、心ふるわすような魅力的な原石が、眠っていないとも限らない。
都市の中で見いだされそびれた物語を集めてみようと思う。耳目を集めるものとの違いは何だろうか。

そもそも違いなんて、あったのだろうか。

佐原和人